アルバム紹介

自分自身が若い頃に感じていた「ジャズという音楽への疑問」の回答的な意味合いのアルバムです。

「ジャズは難しい」・・これが一般的な方が抱くジャズへの印象ではないでしょうか?

聴き慣れていないと確かに難しく聴こえるし、そもそもよく分からない。「これはもはや無茶苦茶に演奏してるんじゃないだろうか?」とさえ感じてくるジャズ。


ジャズギタリスト時代のChiquewa


随分昔ですが、『the VOCAJAZZ』というコンピレーション・アルバムに参加させて頂いたことがあります。

the VOCAJAZZ vol.1 - V.A.


当時、ボカロ界ではまだジャズはそれほどポピュラーではなく、R&BやJ-POP系の楽曲を制作しつつも「ボカロでもジャズの人気が出ればいいなぁ…」などと薄ら考えてました。

そんな時、同じような考えをお持ちだったコンピ主催者の 喜兵衛さん に声をかけていただいて、当時はまだジャズ作品を発表してなかったのに参加させていただいたわけです。

コンピは大成功で、結果ボカロ界でジャズはそこそこポピュラーな存在になることができました。

この時に制作したのが『Bluebird』という曲です。


Bluebird (2012)


「せっかくこんなコンピなんだし、派手にビッグバンドの曲を作ってみよう!」と考えたのでした。

でも「ビッグバンドなんて打ち込みで作ったことないし、さてどうしたものか・・」と試行錯誤からはじめて、まだリアルなホーン音源も少なかった故にかなり苦労しましたが、何とかカタチにすることができました。

その後、コンピレーション『the VOCAJAZZ』もVol.3になり、再度参加させて頂くことに。

the VOCAJAZZ vol.3 - V.A.


そして再びビッグバンドにチャレンジしたのですが、これがこの『君だけの魔法』の一曲目に収録されている『深紅の薔薇にくちづけを』でした。

深紅の薔薇にくちづけを (2013)



こちらの出来は、正直微妙でした・・。
「そんな作品をコンピに提出するなよ!」とお叱りを受けそうですけど、もちろんカッコよく出来たし、個人的に及第点は満たしてると思いますが、十分に満足いく作品にはなりませんでした。

これが心のどこかにずーっと引っ掛かってて、今回『君だけの魔法』を作ろうと思ったきっかけになったわけです。そして無謀ながら「どうせなら全曲ジャズオーケストラ(ビッグバンド)で!」と考え、こういう作品になったのです。

これは、若い頃に漠然と抱いていた「ジャズが聴き辛いんなら、聴き易くすればいいんじゃね?」という疑問への回答にもなっています。

聴き易くてポップなジャズ・・確かにこういう音楽もあって、日本でも過去にそういうグループもいました。
ただ、そういう人達の音楽も嫌いではなかったし良かったのですが、どう贔屓目に見ても…乱暴に言うと「単なるジャズの皮を被ったJ-POP」に過ぎませんでした。(一般的なリスナーがイメージしているジャズとは少し離れた音楽という意味で、ね)

しかし、ジャズというものは突き詰めれば突き詰めるほどに内容は難解になってしまい、結局「『ジャズ』と呼ぶに相応しいレベルの聴き易いポップな歌ものジャズ」というのはなかなかありませんでした。

そういういきさつで自分で作ってみたわけですが、それなりに納得できる内容になったと思います。
こう書くと手前味噌というか、自信過剰に聞こえちゃって恐縮なんですが、まぁそれくらい自信を持ってお届けできる作品に仕上がったということです。


ジャズに出会った10代の頃から温め続けていたアイデアを、こうしてボカロによって実現できる日が来て、本当に嬉しく思います。

末長くご愛聴いただければ。


Chiquewa